平家物語|「ATSUMORI26」インスタレーションノート

『ATSUMORI26|SAKAI-02 VINYL』(2026)

太夫敦盛と熊谷直実
平家物語巻九「敦盛最期(あつもりさいご)」で語られる、平敦盛と熊谷次郎直実。命の境目を空間として見立てたインスタレーションです。

生と死は、もしかすると薄い膜一枚の隔たりに過ぎないのかもしれません。あちらとこちらを隔てる薄い膜は、同時に冥界へと誘う死の帳のようでもあります。

死の幕/四ノ幕

四枚の幕。
それは冥界からあふれ出た波を表し、あちらとこちらを隔てる境界の役目を果たします。向こう側とこちら側の輪郭を曖昧にする死の幕(四ノ幕)。語り手が声を発するとき、彼岸と此岸を隔てる幕が上がり、あるいは帳が下りるのかもしれません。

紅白の紐

空間を横切る紅白の紐。源氏の白と平家の紅は、交差し、絡まり、張り詰める動作を繰り返します。あちらとこちらを結ぶ糸。このふたつは、熊谷二郎直実と平敦盛を結ぶ運命の糸なのかもしれません。命を奪う側と奪われる側となってしまった二人。切ることで結ばれ、奪うことで残された絆は、ここから物語の中で永遠に続いていくのかもしれません。

会場という此世

本作は、入サ岩﨑商店(静岡県沼津市)で展開しました。音源は会場という此世そのものの響きを活かし、コンクリートの壁による反響、雨音、クラクションや通行人の声をそのまま残しています。過去と現在の境を表す環境そのものの音を活かして、語りを重ねる試みを今後もさまざまな形で発信していきます。

本インスタレーションについて

本作は、ひとつの空間構造を基盤に、複数の物語を通過させる形式で構成されています。死の幕(四ノ幕)と紅白の紐によって組み上げられた装置のもとで、異なる物語が展開されます。物語が変われば、幕は波となり、氷となり、門となります。紐は軍勢となり、血脈となり、あるいは主従や敵同士を結ぶ運命の糸となります。

現在は、以下の物語を展開しています。

  • 巻九「敦盛最期」

同一構造のもとで、今後も異なる物語が立ち上がる予定です。

項目内容
制作時期2026年3月
タイトルATSUMORI26
シリーズSAKAI-02 VINYL
コンセプト冥界へ誘う四(死)の帳
無限の絆。
素材ポリエチレンシート・紐・その他
会場入サ岩﨑商店
制作・演出盛典(インスタレーション・撮影)
語り盛典
雷伝(平家琵琶)・薩摩琵琶(石田琵琶店)


あらすじ

― 敦盛最期(あつもりさいご)
源氏方の武士・熊谷次郎直実は、一の谷の戦いで敗走する平家を追って海岸へ向かう。そこで沖の船へ逃れようとする公達の一人を呼び戻し、組み伏せた。兜を押し上げて顔を見ると、わが子と同じ年頃の若武者であった。熊谷は助命を願い出るが、若武者はそれを拒む。やがて味方の軍勢が迫り、このままでは逃がしきれないと悟った熊谷は、激しい葛藤の末、涙を流しながら首を斬った。その後、鎧を解くと、腰には錦の袋に収めた笛が差してあった。のちに、この若武者が修理大夫経盛の子・平敦盛であり、その笛も祖父の代から伝わる名品であったことが明らかになる。この出来事を契機に、熊谷は武士として生きることに深く悩み、やがて出家を志すようになった。

現代語訳ページはこちら
敦盛最期(前編)
敦盛最期(後編)



パフォーマンス
ある男の話‐平家琵琶「敦盛最期」

▲画面をクリックすると再生されます(音量にご注意ください)
時間|6分59秒
平曲|『敦盛最期』

ある男の話-平家琵琶「敦盛最期」より
この笛を大将軍に見せると、その座に居合わせた人々は皆、鎧の袖を涙で濡らした。後に聞けば、修理大夫経盛の子、大夫敦盛。年は十七。このことにより、熊谷次郎直実は、出家の志を抱くようになったという。(詞章)件の笛は祖父忠盛笛の上手にて、鳥羽の院より下し給はられたりしを、経盛相伝せられたりけるを、敦盛笛の器量たるによつて、持たれたりけるとかや。名をば小枝とこそ申しけれ、狂言綺語の理と言ひながら、遂に讃仏乗の因となるこそあはれなれ。


パフォーマンス
薩摩琵琶正派版「敦盛最期」

▲画面をクリックすると再生されます(音量にご注意ください)
時間|3分48秒
物語|平家物語巻第九『敦盛最期』
編曲|舟
琵琶|薩摩琵琶(正派)|石田琵琶店

詞章
その笛は、祖父忠盛笛の名手にて、鳥羽の院より賜りしを、父経盛に相伝し給ひけるを、敦盛笛の器量たるによつて、持たれたりけるとかや。名をば小枝とこそ申しけれ、狂言綺語の理と言ひながら、遂に讃仏乗の因となるこそ、あはれなれ。

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