平家物語巻第十一|那須与市|テキスタイル

【詳細】
製作|2022年
物語|巻第十一「那須与市」
人物|那須与市
商品|風呂敷(マルチクロス)
カラー|白・黒
ブランド|盛 ※販売終了
Part1
詞章|沖には平家舟を一面に並べて見物す、陸には源氏轡を揃へてこれを見る。いづれもいづれも晴れならずといふ事なし。与市目を塞いで南無八幡大菩薩別しては我国の神明、日光権現宇都宮那須湯泉大明神願はくはあの扇の真中射させて賜ばせ給へ、射損ずるほどならば弓切り折り自害して人に二度面を向ふべからず。今一度本国へ帰さんと思し召さばこの矢外させ給ふなと心の内に祈念して目を見開いたれば風少し吹き弱つて扇も射よげにこそなりにけれ。与市。






Part2
詞章|鏑を取つてつがひよつ引いてひやうと放つ小兵といふ条十二束三伏、弓は強し鏑は浦響くほどに長鳴りして過たず扇の要際一寸ばかり置いてひいふつとぞ射切つたる。鏑は海に入りければ扇は空へぞ揚がりける。春風に一揉み二揉み揉まれて海へさつとぞ散つたりける。皆紅の扇の日出だいたるが夕日に輝いて白波の上に浮きぬ沈みぬ揺られけるを沖には平家舷を叩いて感じたり陸には源氏箙を叩いてどよめきけり。








デザインエピソード(2022年)
今回は那須与市(与一:以降那須与市)の話の後半部分をその1・2に分けてデザインしています。その1のデザインは左に平家、右に源氏。与市が目を閉じ祈りに入る部分で与市の心の中をぎゅっと中心にまとめました。その2は放たれた矢が力強く飛ぶ様子を布面を横断して描きました。その2のデザインは右下部、源氏側は那須与市の次話、弓流(ゆみながし)の挑発合戦に繋がる様子を暗示して塗りつぶしています。
那須与市の話は古典の授業で知っている程度でしたが、平曲を学んでから楽しさが増しました。平家と源氏の気持ちの高まり、瞼を閉じて祈る一瞬、鏑矢の勢い、空を舞う扇。文面から躍動感が伝わります。平曲で声に出すとより世界に没頭できるような気がしています。
最後の「沖には平家船端をたたいて感じたり、陸には源氏箙をたたいてどよめきけり。」次話の弓流に繋がると思うと、源平の盛り上がりを見つめる義経を想像してゾッとします。いろんな視点の楽しみ方があると思いますので、この機会に平曲も聞いていただけたら嬉しいです。
那須与市を学んだ2019年、私は仕事で心身を消耗して感性が乾ききっていました。 何度目かの稽古の時、先生の声を聴きながら自分が海の中に居る感覚に陥って 嬉しくて叫びそうになったのを覚えています。平家物語と先生の声、感覚に向き合う時間が自分の消耗しきった感性を蘇らせてくれました。今もずっと私の心を潤してくれています。
平曲(平家物語を語り琵琶で伴奏するもの)を学んでいると、どの話も読むたびに気付きがあって、少し時間を置いて再び物語を読むと感じ方が変わっている自分がいます。
あの時はこう感じていたけど、今はこう感じる。歴史や古典の史実に基づいたきちんとした解釈でなくても史実を横に携えながら物語の奥行を想像する。そうすると好奇心がくすぐられるので調べて学び、声を出し、新しい視点や気付きを得る。この流れを繰り返すようになりました。そうすると心が温かくなるというか、私の個人的な感覚ですが自分に自信がつきます。誰かに形作られた自信じゃない、自分で積み上げた自信。これからもコツコツと育みます。