今日は2025年5月6日・6月10日に行った小さな演奏会『横笛』の開催報告です。この演奏会は神奈川県大磯町の「大磯鴫立庵」で行いました。
演奏会案内ページはこちら
https://morinorijapan.com/lecture-and-performance/20250506

5・6月は平家物語巻第十『横笛』を語りました。

6月10日の鴫立庵の様子。

会場(鴫立庵控室)の様子
鴫立庵で行っている私の演奏会では入口で入庵料(町内110円、町外310円)と演奏会代1100円をお支払いいただくと、靴を脱いで畳のお部屋(控室)に上がります。ここが演奏会会場です。畳のお部屋ですが、椅子をご用意しています。また、鴫立庵は入口の石段や控室の入口に段差がありますので、ご来場の際は足元にお気を付けください。

5月は『横笛』、6月は『横笛』と併せて『維盛入水』の後半を語りました。このふたつは昨年、横浜の地下スタジオをお借りして行った小さな演奏会『那智の沖にて』の演目でした。課題が多かったため今年も取り組むことにしましたが、昨年の課題に加え、新たな課題も見つかりました。継続して取り組まなければ気づけないことが数多くあると改めて感じました。
鴫立庵の演奏会では通常、途中で現代語訳を交えながら演奏を行うためテキストは配布していませんが、『維盛入水』の後半は現代語訳を挟みにくい性質上、テキストを配布しました。今後の演奏会でも1~2枚程度の配布を検討いたします。
演奏後の短いお話では、個人的な感想として、5月は「滝口入道、横笛に一言あってもよかったのにと思うんです。せめてお手紙を置いていってくれたらって。横笛ちゃんが可哀そう。男ってなんだかなあ」。6月は「維盛入水は悲しい物語ですが、平曲の構成や語りの音に救いを感じる。語っていると、お日様が迎えに来るような気がします」と、私の率直な思いを言葉のままお伝えしました。
私が演奏会で語っているのは覚一本と呼ばれる平家物語で、江戸時代頃に整えられた墨譜を使用しています。演奏会では、文字だけになってしまった覚一本の平家物語を墨譜に戻して読み直し、語りの形へと遡りながら、現代語訳を添えて物語の魅力を伝えていく取り組みを行っています。私自身、まだまだ学ぶことが山積みですが、多くの方々が後世のために口伝と資料を残してくださったおかげで、学びを続けることができています。全国各地には現在でも平曲を学ぶ方が多く居て、伝える場所ごとに調弦や語り方も様々です。私などが大それたことは言えませんが、この多様性と伝承の過程こそが生きた伝統なのではないかと考えています。私の場合は師匠の須田誠舟先生のご指導と、誠舟先生の平家琵琶の師匠である金田一春彦先生が残してくださった口伝と膨大な研究資料のおかげです。演奏会ではなかなかお話しする時間がありませんが、また機会があれば師匠から伺ったお話などもお伝えできればと思っています。
演奏会にお越しくださった皆さま、鴫立庵の皆さま、雨の中ありがとうございました。あっという間に梅雨!どうぞお身体を大切になさってください。再びお目にかかれる日を心より楽しみにしております。
次回7月は『鵺』を語ります。
すこし怖い?大丈夫です。源三位頼政と頼れる郎等猪早太が退治してくれますので安心してお申込みください。
詳細はこちらから↓
https://morinorijapan.com/lecture-and-performance/202507
