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那智の沖にて|寝ながら聞く平家琵琶で聞く平家物語


音量にご注意ください
時間:4分28秒
録音:2024年8月27日 本番
会場の音をそのままにしているため、お聞き苦しい箇所があります。

語り(演奏会の構成上口説を素声で語っています)
横笛この由を伝へ聞いて、我をこそ捨てめ様をさへ変へける事の恨めしさよ。たとへ世をば背くともなどかはかくと知らせざるべき尋ねて今一度恨みばやと思ひ、ある暮れ方にひそかに内裏をば紛れ出でて嵯峨の方へぞ憧れける。比は二月十日余りの事なれば梅津の里の春風に余所の匂ひも懐かしう。

現代語訳
横笛はこのことを伝え聞き、「私を捨てて出家してしまったことが恨めしい。たとえ世を捨てるにしても、どうしてそのことを知らせてくれなかったのか。訪ねて今一度恨みを晴らしたい。」と考えながら、ある夕暮れに都を出て嵯峨の方へと向かいました。頃は二月十日過ぎ、梅津の里の春風には外の匂いも懐かしく。

音声のみ
平曲「維盛入水」
音量にご注意ください
録音:2024年8月3日
5分55秒

語り
説我得仏十方衆生至心信業欲生我国乃至十念若不生者不取正覚と説かれたれば一念十念の頼みあり。唯この教へを深く信じて努々疑ひをなし給わで。無二の懇念をいたして、若しは一遍も若しは十遍も、唱へ給ふ物ならば、弥陀如来六十万億那由多恒河沙の御身を縮め、丈六八尺の御形にて、観音勢至無数の聖衆、化仏菩薩、百重千重に囲繞し、伎楽歌詠じて只今極楽の東門を出て来迎引接し給はんずれば、御身こそ蒼海の底に、沈むと思し召さるとも紫雲の上に、登り給ふべし、成仏得脱して悟りをひらき給ひなば娑婆の故郷に立ち帰つて、妻子を導き給はんこと、還来穢国度人天。

現代語訳
説我得仏十方衆生至心信業欲生我国乃至十念若不生者不取正覚(もし私が仏となったときに、あらゆる方角の衆生が真心から信じ、私の浄土に生まれたいと願い、その願いをもって十回の念仏を唱えたならば、その者が生まれないことがあれば、私は仏とならない。)と説かれています。このため、一念十念の信仰が重要なのです。ただ、この教えを深く信じて、決して疑わないことです。心を込めて一遍でも十遍でも唱えれば、阿弥陀如来は六十万億那由多恒河沙の身を縮め、丈六八尺の姿となって、観音や勢至、多くの聖衆や化仏菩薩に囲まれ、伎楽を奏でながら極楽の東門を出て迎えに来てくださいます。ですから、たとえ自分が海の底に沈むと思っても、紫雲の上に昇ることができるのです。もし成仏して悟りを開けば、この娑婆の故郷に戻って妻子を導くことができるでしょう。還来穢国度人天(現世に還り来て人を救う)

平家物語巻第十『横笛』現代語訳あらすじ


【この演奏会について】
寝ながら聞く平家琵琶で聞く平家物語は、寝ながら(横になりながら)平家琵琶の伴奏で『平家物語』を語る平曲をお聞きいただく演奏会です。日常を離れて、平家物語の世界に入ってみませんか?難しい言葉や音の響きで眠気を感じるかもしれませんが、そのまま眠ってしまっても構いません。平家琵琶の音色と語り手の声が舞台装置です。物語の風景は皆さんの心の中で創り上げてください。

盛典より
今回の演奏会「那智の沖にて」で語る平家物語巻第十の『横笛』と『維盛入水』は、『那須与市』や『敦盛最期』に比べると耳にする機会が少ないかもしれません。『維盛入水』は平維盛が那智の沖で入水するときの物語で、『横笛』は平維盛が入水する際に念仏を唱える滝口入道が出家したときの物語です。どちらも現世の苦しみからの解放と精神的な昇華が描かれています。少し長いですが、ご来場いただく前に下記リンクのあらすじをお読みいただくと良いかもしれません。時間の都合上すべてを演奏することはできませんが、なるべく長く平家物語の世界へご一緒できればと思っています。

【那智の沖にて】
平曲(平家琵琶の伴奏で平家物語を語るもの)の平家物語巻第十「横笛」と「維盛入水」を語ります。それぞれの物語で描かれる現世の苦しみからの解放と精神的な昇華。時頼と横笛の物語は出家という形で精神的な成長と解放を遂げ、維盛は自らの命を終えることで、家族や仲間への未練を断ち切り、悟りへの道を選ぶことになります。

平家物語巻第十『横笛』あらすじ
平維盛は都に残した家族への思いを胸に、葛藤しながら屋島から高野山へと向かいます。そこにはかつて愛した女性、横笛に想いを寄せながらも、家族の反対に遭い仏道へと進んだ滝口入道(斎藤滝口時頼)がいました。維盛の最期を見送る滝口入道が仏道に向かうきっかけとなった横笛との物語です。

『横笛』現代語訳全あらすじ
https://morinorijapan.com/tale-of-the-heike/yokobue-nachinookinite

平家物語巻第十「維盛入水」あらすじ
熊野三山を参詣した平維盛達は、海へと進みます。入水を前に家族への思いに苛まれる維盛の様子を見た滝口入道は、涙をぬぐい平常心を装って維盛を説きます。未練を断ち切り、悟りの道を選ぶ維盛の最期が描かれます。

『維盛入水』現代語訳全あらすじ
https://morinorijapan.com/tale-of-the-heike/koremorijusui-nachinookinite

9月24日開催概要】
かながわ県民文化祭参加プログラム
那智の沖にて|寝ながら聞く平家琵琶で聞く平家物語
日程:2024年9月24日(火)
時間:13:00~14:00  開場12:40
定員:6名
演目:平家物語巻第十「横笛」「維盛入水」
タイプ:寝ながら聞く(簡単な解説後、平家琵琶による演奏と語り)
※この会場では靴を脱いでお入りください。ヨガマットをご用意しています。
料金:2200円(税込)
お支払い:事前決済(予約サイトにてクレジットカード決済)
お申込み期限:2024年9月23日(月)
お申込みはこちら:https://select-type.com/ev/?ev=toxi6BQDJCE

【場所】
kt.Space
神奈川県横浜市 中区相生町1-15 第二東商ビルB1階
ブルーライン 関内駅 徒歩7分
みなとみらい線 日本大通り駅 徒歩5分
※大きい道路側 <ほっともっと> を正面にして左側に入口があります。
※細い路地にも入口がありますがそちらからは出入りできませんのでご注意ください。


【お願い】
この演奏会は予約制です。申し訳ございませんが、前日までにお申込みいただいていない場合は、当日会場にお越しいただいてもご入場いただけません。また、演奏の品質とお客様の体験のため開演後のご入場はお断りしています。何卒ご了承ください。