演目紹介


平家物語、それは
始まりのための終わり。
魂を鎮める祈りが織りなす物語。

生前の活躍や最期の瞬間
時を越えて現代に語り継がれる命の旅路。


【木曽義仲は振り返る】
あの時振り返ってしまった木曽義仲の、あの時のことを振り返る木曽義仲の物語。平家琵琶の伴奏で平家物語を語る平曲の演奏会です。※この演奏会は言葉の雰囲気を大切にするため現代語訳を少なくしています。

平曲:木曽最期平家物語巻第九)
最後の五騎にまで追い詰められた木曽義仲。義仲は女武者の巴に早く逃げるよう強く言いますが、巴は立ち去りません。そこに御田八郎師重が現れ、巴は最後の奮戦を見せます。その後、義仲の側に残ったのは今井四郎兼平。義仲はともに討ち死にしようとしますが、兼平は涙ながらに義仲に松原へ向かうよう促しました。松原へ向かう義仲を背に、兼平の最期の戦いが始まります。義仲が自害するまでのわずかな時間を稼ぐため、兼平はただひとり名乗りを上げ、矢を放つのでした。




【義経の声】
平家物語に登場する九郎判官義経(源義経)の言葉は、様々な曲節で感情豊かに表現されています。怒る義経、笑う義経。悲しむ義経、脅す義経。平家琵琶の伴奏で語る平家物語で義経の声を聞いてみませんか?平家物語の中から義経が喋っている場面を集めた演奏会です。

ショートパフォーマンス版
平曲:坂櫓・嗣信最期・那須与市・弓流
(平家物語巻第十一)

フルパフォーマンス版
平曲:坂櫓・嗣信最期・那須与市・弓流・判官都落
(平家物語巻第十一「坂櫓」「嗣信最期」「那須与市」「弓流」巻第十ニ「判官都落」




【あのひとのうた】
平家物語の中に登場するあの人の歌。場面を象徴する歌の部分を平家琵琶の伴奏で語る(歌う)小さな演奏会です。

平曲:一門都落(平家物語巻第七)
「はかなしな主は雲井に別るれば宿は煙と立上るかな」「故郷を焼野の原とかえりみて末も煙の浪路をぞゆく」
平曲:横笛(平家物語巻第十)
「剃るまでは恨みしかども梓弓まことの道にいるぞうれしき」「剃るとても何か恨みん梓弓引きとどむべき心ならねば」
平曲:海道下(平家物語巻第十)
「旅の空赤土の小屋のいぶせさに故郷いかに恋しかるらん」「故郷も恋しくもなし旅の空都も終の住家ならねば」





【少し怖い平家物語 】
少し怖い平家物語は、平家物語の中の不思議な話や怪談のモデルになった話を平家琵琶の伴奏で語る小さな演奏会です。大丈夫、昼間に聞けば怖くない(この演奏会は日中に行っています)。

平曲:鵺平家物語巻第四
仁平の頃、近衛天皇が夜な夜な怯えるという出来事がありました。武士に命じて警護をさせようと源平両家の武士の中から選びだされた源頼政は、郎等の猪早太と待機します。丑の刻、東三条の森の方から黒雲が湧いて御殿の上にたなびくと、頼政は雲の中に怪しい物の姿を見るのでした。








【始めまして平家物語 】
その昔勉強したかもしれない、黒板で文字を見た気がする、テストに出たような。あの平家物語にもう一度出会ってみませんか?今度は音で!平曲(平家琵琶の伴奏で平家物語を語るもの)で、平家物語の世界へご一緒しましょう。

「扇の的」
平曲:那須与市(平家物語巻第十一)

源平の合戦の折、日暮れ時に一段落としようとしたその時、平家の小舟が一隻現れました。その中から現れた若い女性が、扇を船端に立てて手招きをしています。そこで、源氏の大将軍九郎判官義経は、優れた射手である那須与市(与一)を呼び、扇を射落とすよう命じました。重大な任務に最初は躊躇した与市ですが、義経の命に従い引き受けます。源平の両軍が息をのんで見守る中、与市は神々に祈りを捧げ、勇気を振り絞って弓を引くのでした。

「敦盛」
平曲:敦盛最期(平家物語巻第九)

源氏の武士、熊谷次郎直実は、一の谷の戦いで敗北し、逃れようとする平家の貴族たちを追いかけて海岸へと向かいました。そこで熊谷は、豪華な武具を身につけた若武者と遭遇します。熊谷は彼を捕らえることに成功しますが、その若武者が自分の息子と同じくらいの年齢であることに気付きます。彼に同情し、その命を救いたいと考えますが、若武者はこれを拒否。背後から迫る味方の手に掛かるよりはと、熊谷は葛藤しながら刀を握るのでした。




【平家物語の中の梶原一族】
平家物語に登場する梶原一族。景時が長男景季のために戦場に戻る「二度魁(二度之懸)」、佐々木に連れられた生食を見た景季の気持ちが溢れる「生食」、素直に佐々木に騙されてしまう「宇治川先陣」、大切な気持ちがあるからこそ一触即発の「坂櫓」など、応援せずにはいられない梶原一族の物語を集めた演奏会です。

平曲:生食・宇治川先陣・二度魁・坂櫓
(平家物語巻第九「生食」「宇治川先陣」「二度魁」巻十一「坂櫓」



【寝ながら聞く平家琵琶で聞く平家物語】
寝ながら聞く平家琵琶で聞く平家物語は、寝ながら(横になりながら)平家琵琶の伴奏で平家物語を聞いていただく会です。日常を離れて、平家物語の世界に入ってみませんか?難しい言葉や音の響きで眠気を感じるかもしれませんが、そのまま眠ってしまっても構いません。平家琵琶の音色と語り手の声が舞台装置です。物語の風景は皆さんの心の中で創り上げてください。

平曲:竹生嶋詣(平家物語巻第七)
詩歌管弦に長けていた平経正(たいらのつねまさ)は、進軍の途中で訪れた竹生島の美しい自然に深く感動します。経正はこの島が神聖な場所であると感じ、神々への祈りを捧げ、琵琶を演奏するのでした。すると…。お聞きいただきながら経正の心の動きに思いを添わせると、最後に見えない何かが像を結ぶかもしれません。




【那智の沖にて】
平家物語巻第十「横笛」と「維盛入水」を平家琵琶の伴奏で語ります。それぞれの物語で描かれる現世の苦しみからの解放と精神的な昇華。時頼と横笛の物語は出家という形で精神的な成長と解放を遂げ、維盛は自らの命を終えることで、家族や仲間への未練を断ち切り、悟りへの道を選ぶことになります。

平曲:横笛(平家物語巻第十)
平維盛は都に残した家族への思いを胸に、葛藤しながら屋島から高野山へと向かいます。そこにはかつて愛した女性、横笛に想いを寄せながらも、家族の反対に遭い仏道へと進んだ滝口入道(斎藤滝口時頼)がいました。維盛の最期を見送る滝口入道が仏道に向かうきっかけとなった横笛との物語です。

平曲:維盛入水(平家物語巻第十)
熊野三山を参詣した平維盛達は、海へと進みます。入水を前に家族への思いに苛まれる維盛の様子を見た滝口入道は、涙をぬぐい平常心を装って維盛を説きます。未練を断ち切り、悟りの道を選ぶ維盛の最期が描かれます。





【最期の海 、壇ノ浦。 】
あの日の景色。あの時の声。今は見えないざわめきを集めて語る。最期の海、壇ノ浦。
壇ノ浦合戦に纏わる平家物語を平曲(平家琵琶の伴奏で平家物語を語るもの)でお聞きいただく演奏会です。

平曲:壇浦合戦(平家物語巻第十一)
壇ノ浦では、源氏と平家が天にも地にも響き渡るほどの鬨の声を上げました。平知盛は舟の甲板に立ち、「天竺・震旦にも我が日本にも並びなき名将・勇士といえども、運命が尽きればどうしようもない。しかし名は惜しい。命をいつのために惜しむのか。軍は今日限りだ」と兵たちを鼓舞します。

平曲:遠矢(平家物語巻第十一)
源氏の和田小太郎義盛が平家の勢力に向かって次々に矢を放ちます。船に刺さった矢を平家方の仁井紀四郎親清が射返しました。源平の兵たちは命も惜しまず攻め戦いましたが、源氏は安徳天皇と三種の神器があるため手が出せません。すると、白雲のようなものが空に漂ってきました。

平曲:先帝御入水(平家物語巻第十一)
平家の舟を源氏が次々と制圧していきます。平知盛は最期を感じ、御座舟の掃除を始めました。二位尼は「私は女であっても、敵の手にはかかりません。帝のお供に参ります」と言い、安徳天皇を抱いて海に進みます。

平曲:能登殿最期平家物語巻第十一)
能登守教経は義経の顔を知らなかったため、立派な甲冑をまとった武者に次々と攻撃を仕掛けます。幸運にも義経の舟に乗り込みますが、義経は味方の舟に飛び移ってしまいました。教経は追うことができず、武器や兜を海に捨て「我こそはと思う者はここに来て、おれと組み合って生け捕りにしろ」と両手を広げます。

平曲:内侍所都入(平家物語巻第十一)
軍の終わり。海上には赤旗や赤印が切り捨てられ、まるで龍田川の紅葉が嵐で吹き散らされたように。白波は薄紅に染まります。




【平家物語、祈りのかたちをした呪い 。】
史実と創作によって複雑に描かれる平家物語。登場人物たちは物語の中で誇張され、独特のキャラクターとして描き出されます。まるで平家物語という大きな流れに縫い留められるように。登場人物たちは、永遠に解けない祈りのかたちをした呪いの中で今も生きているのかもしれません。語り手がそう思う平家物語のエピソードと平曲(平家琵琶の伴奏で平家物語を語るもの)を披露します。

平曲:入道逝去(平家物語巻第六)
清盛の病状は日に日に悪化し、体は高熱に苛まれ、まるで火のように熱くなります。北の方である八条二位殿は、夢の中で清盛が無間地獄に落とされると告げられます。清盛は死の床で「思ひ置く事とては今生にひとつもなし」と言いながら「但し思ひ置く事とては入道が一期の中に頼朝が首を見ざりける事こそ口惜しけれ」と最期の言葉を続けるのでした。





【耳なし芳一 平家琵琶の語りによる物語の継続】
これは私の物語。 平家物語を語る琵琶法師をモデルにしたと言われる怪談耳なし芳一。あの夜、もしも芳一が違う決断をしていたら。物語の中で描かれる「壇ノ浦合戦」の語りを実際に平家琵琶で行う一人芝居です。


このページの演目は以下の出典に基づき、以下の構成・演出により制作されています。

【出典】
金田一春彦(1998年)『青洲文庫本 平家正節』三省堂出版

【構成・演出】
盛典・株式会社BRIGADE

【耳なし芳一】
原作:耳なし芳一 小泉八雲
脚本・演出:盛典