平家琵琶で聞く平家物語|聞いてみませんか?平家物語巻第十一『那須与市』

平家琵琶の伴奏で語られる平家物語を聞いたことがありますか?
平家(へいけ)や平曲(へいきょく)と言われ、神社仏閣や能楽堂などで耳にする機会があるかもしれません。研究に携わる方や奏者の方が全国のあらゆるところにいらっしゃるので、機会があればぜひ聞いていただけたらと思います。私も様々な方が語る平曲を沢山聞いていきたいです。

さて、今日は平家物語の中でもよく知られている巻第十一の那須与市(なすのよいち:譜面の表現上与一ではなく与市としています)から、源義経に呼ばれた与市が登場する場面と、与市が居る海の情景や景色を表す場面の音をご紹介します。

その前に、那須与市の簡単なあらすじを…

平家物語巻第十一「那須与市(なすのよいち)」
源平の合戦の折、日暮れ時に一段落としようとしたその時、平家の小舟が一隻現れました。その中から現れた若い女性が、扇を船端に立てて手招きをしています。そこで、源氏の大将軍九郎判官義経は、優れた射手である那須与市(与一)を呼び、扇を射落とすよう命じました。重大な任務に最初は躊躇した与市ですが、義経の命に従い引き受けます。源平の両軍が息をのんで見守る中、与市は神々に祈りを捧げ、勇気を振り絞って弓を引くのでした。

※音量にご注意ください

【音声のみ】
平家物語巻第十一「那須与市(なすのよいち)」 
録音:2024年1月9日 リハーサル
源義経に呼ばれた与市が登場する場面

語り ※平家正節より
与市其頃はいまだ二十ばかんのをのこなり。かちに赤地の錦をもって、衽はた袖いろへたる直垂に、萌黄匂いの鎧着て、足白の太刀をはき、二十四指いたるきりうの矢負い、薄切符に鷹の羽わり合わせてはいだりけるのた目のかぶらをぞさし添えたる。重藤の弓脇にはさみ甲をば脱いで高紐にかけ、判官の御前にかしこまる。

※音量にご注意ください

【音声のみ】
平家物語巻第十一「那須与市(なすのよいち)」 
録音:2024年1月9日 リハーサル
与市が居る海の情景や景色を表す場面

語り ※平家正節より
比は二月十八日酉の刻ばかんの事なれば折節北風烈しくて磯打つ浪も高かりけり。


他の平家物語にも興味がある方はこちらをどうぞ。
メニューの「音を見る」からお聞きいただけます。
https://morinorijapan.com/see-the-sound/


素朴な平家琵琶の音と独特な語り。皆さんが思っていた琵琶の音色や声とは異なっているかもしれません。シンプルだからこそ自分の感覚で味わう平家物語の奥行。それは自分自身の感情や感覚と向き合う時間だとも思っています。見えない場面を自分で想像して、組み立てて、物語の中に旅をする。これから皆さんと長く平家物語の世界を旅できるように、ご案内できるように私も練習を重ねて参ります。


関連記事