『木曽最期』現代語訳あらすじを平家琵琶の語りから

平家物語『木曽最期』現代語訳あらすじを平家琵琶の語りから

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平家物語現代語訳あらすじ一覧
※平曲の譜面から書き起こした文章を現代語訳にしています
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このページの内容
平家物語の中でも屈指のエピソードである『木曽最期』のあらすじと、平家琵琶の語りについてご紹介します。拙いものですが、現代語訳を混ぜながら平家物語を平家琵琶で語る側からの視点で、魅力や表現を掘り下げていきます。また、後半に平曲『木曽最期』の演奏会と琵琶について紹介しています。興味をお持ちいただけましたら、ぜひご覧ください。


『木曽最期』物語の背景
信濃国で挙兵した木曽義仲は平家を都から追放しましたが、都での評判は芳しくありませんでした。義仲やその軍を疎ましく思う人々が多かったため、源頼朝は義経と範頼を派遣し、義仲を追い詰めていきます。

『木曽最期』現代語訳あらすじ
最後の五騎にまで追い詰められた木曽義仲。義仲は女武者の巴に早く逃げるよう強く言いますが、巴は立ち去りません。そこに御田八郎師重が現れ、巴は最後の奮戦を見せます。その後、義仲の側に残ったのは今井四郎兼平。義仲はともに討ち死にしようとしますが、兼平は涙ながらに義仲に松原へ向かうよう促します。義仲が自害するまでのわずかな時間を稼ぐため兼平は奮戦しますが、義仲は松原へ向かう途中で薄氷の張った深田に足を取られ石田次郎為久の郎等に首を取られてしまいます。それを知った兼平は戦いを止め、太刀を口に含んで馬から飛び降りるのでした。

平家琵琶で語る平曲『木曽最期』の流れ
平家琵琶の伴奏で平家物語を語る平曲(へいきょく)で演奏される『木曽最期』は、信濃を立つ木曽義仲が連れている巴の描写からはじまります。大津の打出浜で今井四郎兼平と合流した義仲は兼平に、「汝が行方の覚束なさに多くの敵にうしろを見せて是までのがれたるはいかに」と言い、兼平も「兼平も勢田にて討死に仕るべう候ひしかども御行方の覚束なさに多くの敵に後を見せて是までのがれ参って候」と応えます。

その後三百騎程馳せ集まった勢とともに、甲斐一条次郎六千余騎の軍に駆け入ります。ここでは義仲の装束や名乗りの大音聲、軍の様子が力強く語られます。その後わずか五騎になってしまった中に残る巴に、義仲は離脱を促し、巴は恩田八郎師重を相手に最後の軍を見せ東国へ去っていきました。ここで共に残る手塚太郎が討ち死にし、手塚の別当が落ちていった様子が静かに語られます。

その後、義仲と兼平のふたりを様子を表す曲節に合わせて義仲の言葉が語られます。「日頃は何とも思えぬ鎧が今日は重うなったるぞや」。兼平は義仲を励ましながら、射残している矢があること、その矢で自分が時間を稼ぐ間、義仲に自害をするよう促します。義仲は、「所々で討たれんより一所でこそ討死をもせめ」と馬を走らせようとします。ここで兼平は義仲の馬の水付に取り付いて涙を流しながら言います。「弓矢取は年頃日頃いかなる高名候へども、最期に不覚しぬれば永き瑕にて候なり。御身もつかれさせたまひ候ひぬ、御馬も弱って候。」

このまま誰とも分からない郎等に首を取られては悔しくてならないと、義仲を粟津の松原へ向かわせた兼平は只一騎、追いかけてくる五十騎ばかりの勢の中へ駆け行ります。ここで兼平の名乗りの大音聲、奮戦の様子、兼平の鎧に矢一つあたらない様子が声高らかに語られます。

場面は移って義仲が松原に駆けている途中、薄氷の張った深田に足を取られてしまい、身動きが出来なくなる様子が語られます。兼平の行方がどうなったかと振り向いたところへ、三浦の石田次郎為久が放った矢が義仲の内兜を射抜きました。義仲は石田の郎等二人に首を取られてしまいます。

やがて義仲の首を太刀の先に貫き、名乗りを上げる三浦の石田次郎為久を兼平は見ます。軍を語る力強い語りは悲しみを帯び「今は誰を庇って軍をすべきか、是見たまえ東国の殿原、日本一の剛の者の自害する手本よ。」そう言って太刀の先を口に含み、躊躇なく馬から飛び降りる様子が語られた後、さてこそ粟津の軍は破れにけれという言葉が続いて物語は幕を下ろします。

平家琵琶で聞く『木曽最期』
私たちは2024年から平曲の小さな演奏会を行っています。平曲『木曽最期』をお聞きいただく演奏会「木曽義仲は振り返る」は終了いたしました。2025年に再演を予定しています。

※音量にご注意ください
木曽義仲は振り返る|冒頭
音声のみ5分33秒(木曽最期3分15秒~)

※音量にご注意ください
平曲『木曽最期』木曽義仲は振り返るより
録音:2024年7月30日本番
音声のみ4分43秒
会場の音をそのままにしているため、お聞き苦しい箇所があります。

「木曽義仲は振り返る」開催報告はこちら
https://morinorijapan.com/concerts/reporte-kisoyoshinaka-20240730

音声内容
「遠からん人は音にも聞け、近くは目にも見給へ。木曽殿の乳母子に今井四郎兼平とて生年三十三に罷り成る、さる者ありとは鎌倉殿までも知ろし召されたるらんぞ。兼平討つて兵衛佐殿の御見参に入れやとて、射残したる八筋の矢を差し詰め引き詰め散々に射る。死生は知らず矢庭に敵八騎射落し、その後太刀を抜いて斬つて廻るに面を合はする者ぞなき。ただ射取れや射取れとて差し詰め引き詰め散々に射けれども、鎧よければ裏かかず、あきまを射ねば手も負はず。」

平家琵琶
平家琵琶は横に構える琵琶で、平家物語を語るために使う琵琶です。口伝や墨譜(文字に譜面が振られている)によって伝えられた平曲、平家物語を平家琵琶の伴奏で語ります。平家琵琶は詞章の前後にささやかに奏でられるのが特徴です。盛典が用いるのは平家琵琶です。

薩摩琵琶・筑前琵琶
薩摩琵琶や筑前琵琶は縦に構える琵琶で、平家物語以外の曲も演奏できます。それぞれの流派ごとに平家物語に節を付けて歌います。ダイナミックで華やかな演奏が間に入るのが特徴です。

琵琶が好き・興味がある方へ
平家物語をテレビで見た、アニメで琵琶が登場した、琵琶の音色が気になる方は、番組のエンドクレジットに掲載されている奏者の名前で検索することをおすすめします。また、平家物語を演奏している琵琶は平家琵琶ではなく、薩摩琵琶や筑前琵琶であることも多いです(薩摩琵琶や筑前琵琶で演奏される平家物語にも魅力が沢山あります)。日本唯一の琵琶楽総合実演家団体「日本琵琶楽協会」のサイトをご覧いただくと、様々な琵琶や演奏会の情報を得ることができます。
日本琵琶楽協会サイトはこちら(遷移します)


ここまでご覧いただきありがとうございました。
いつかどこかでお会いできますように。




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