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平家物語巻第十二『泊瀬六代』現代語訳あらすじ

平家物語巻第十二『泊瀬六代』現代語訳あらすじ|六代御前と文覚

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平家物語巻第十二『泊瀬六代』現代語訳あらすじ

平家物語巻第十二『泊瀬六代』簡単なあらすじ
文覚が到着し六代御前の命は保たれた。文覚は六代御前を引き取ることを申し出る。様々な手段を尽くし鎌倉殿の許しを得たのだった。その後六代御前達は都に向かい大覚寺に辿り着くが、そこには人の気配がなかった。母にもう一度会いたいという気持ちで命を繋いでいた六代御前は落胆する。翌朝、母が長谷寺に居ることを知り斎藤六が向かう。再会した母は六代御前に出家を勧めるが、文覚はこれを惜しみ、高雄に連れて行く。観音の大慈悲により、六代御前はしばらくの間救われた。

平家物語巻第十二『泊瀬六代』現代語訳全文
※平曲の譜面『泊瀬六代』から書き起こした文章を現代語訳にしています

その後、文覚坊も現れ、若君を預かりたいと申し出た。その姿勢は非常に厳粛で真剣であった。この若君の父である三位中将殿は、何度も戦の大将軍を務めた人物であり、誰が何を言おうとも、その願いが叶うことはないと語っていた。しかし、「もし聖(文覚)の心を破ることになれば、どうして仏の加護を得られましょうか」などと様々に言い募ったが、それでも若君を預かることはできないと断られた。

やがて、那須野の狩りに出かけた際も狩場に同行し、再度様々な手を尽くしていた為にこんなにも遅くなってしまったと言うと、北条が「聖が二十日とおっしゃった約束の日数が過ぎたので、これは許しを得ていないと判断し、恐れ多くも過ちを犯すところでした」と答えた。そして、鞍を置いて引かせた乗り換え馬に斎藤五と斎藤六を乗せて、都へ上らせた。北条も遠くまで送ったが「今しばらく御供をしたいのですが、鎌倉殿に報告すべきことが多いので」と互いに別れ、関東へ下って行った。本当に情深いことであった。

その後、高雄の文覚上人は六代御前を連れて、昼夜を問わず急いで都へ向かい、尾張国の熱田の辺りに着く頃には、すでにその年も暮れようとしていた。正月五日の夜、都に入り、二条猪熊にある文覚坊の宿房に落ち着き、しばらく休んでから、夜半過ぎに六代御前を大覚寺へお連れした。

門を叩いたが、誰も応じる者はおらず、音も聞こえなかった。すると、若君が飼っていた白い犬が、築地の崩れたところから走り出て、尾を振って迎えた。若君は母上はどこにいらっしゃるのかと問いかけ、その様子はなんとも哀れであった。

斎藤六はその場所を知っていたため、築地を越えて跳び入り、門を開けてお入れした。しかし、近くには人が住んでいる様子はなく、まるで廃墟のように感じられた。若君は「命を長らえたいと思ったのは、ただ母上にもう一度会いたいという気持ちからだ。しかし、今となっては生きて何の意味があるのか」と悶え焦がれた。

その夜をそこで明かし、翌朝、近くの里の人に尋ねると、「年内は大仏詣でに行かれたと聞いておりますが、正月の間は長谷寺に御籠りされていると承っております」と答えられた。斎藤六が急いで長谷寺へ向かい、このことを母上に伝えると、母上は取る物も取らず急いで都へ戻り、大覚寺へお越しになった。

母上は若君を見て、「どうしたことか、六代御前、早く出家なさい」とおっしゃったが、文覚はそれを惜しんで、出家させることはなさらなかった。そして、六代御前を高雄へお連れし、母上のことも支えたと伝えられている。観音の大慈悲は、罪ある者も罪なき者も救ってくださるので、昔からこのような例は多くあったが、誠にありがたいことであった。



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▼前のお話『六代乞請』はこちら
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