【次回の演奏会】10月29日(火)「最期の海、壇ノ浦。」▶

【開催報告】那智の沖にて|ニ日目|平家物語『横笛』『維盛入水』

声で紹介

このページの内容を盛典の声で聞く
※音量にご注意ください

今日は2024年9月24日(火)に行った小さな演奏会「那智の沖にて」の開催報告です。この演奏会は8月27日と9月24日の二日間、横浜のkt.Spaceさんをお借りして行いました。

那智の沖にて特集ページはこちら
https://morinorijapan.com/nachinookinite

開催報告:
9月24日(火)那智の沖にて

二つの撥を切り替えて物語を語る
今回の演奏会は初めての試みで、物語の途中で使う撥を変えました。右側は私の撥、左側は師匠の御下がりです。前半の『横笛』は師匠の撥で、後半『維盛入水』の滝口入道の語りから私の撥に変えています。私の個人的な感覚ですが、平家琵琶の撥は薄く角ばっているので弾いたときの音の張りが軍や合戦などの物語を語るのにぴったりです。悲しい物語を語るときの悲壮感にもよく合う気がしています。この会場は音がとても響くので、柔らかい音が出やすい師匠の撥を使って物語を語りはじめ、滝口入道が維盛に教えを説くところから私の撥に変えて勢いを付けて最期に向かいました。課題は山積ですがとても有意義な挑戦でした。

今回の演奏会の音源はこちらです(音量にご注意ください)

【音声のみ】音量にご注意ください
時間:60分36秒
録音:2024年9月24日 本番
平曲『横笛』4:03~
平曲『維盛入水』30:36~
会場の音をそのままにしているため、お聞き苦しい箇所があります。また演奏会の構成上、曲節を素声にしているところがあります。

それぞれの物語の現代語訳は特集ページからご覧ください
https://morinorijapan.com/nachinookinite

今回の装い
卵色の色無地・青緑の帯・生成色の袴

見えない景色を自分の中に見る
今年初めて行った演奏会「那智の沖にて」。構成を『横笛』と『維盛入水』のふたつに決めて数か月向き合ってきました。少人数ですがお客様の前で語ること、対価をいただいて演奏することの重さを感じつつ、見えない景色を自分の中に見る感覚を大切にしてきました。

私の中の想像・妄想ですが、『横笛』の物語では衣から覗く横笛の柔らかい指先を、『維盛入水』の物語では維盛を見送った与三兵衛と石童丸が、顔を合わせて頷くところを見ました。物語に書いていない自分にしか見えない景色、妄想ですが、感覚を研ぎ澄ます想像を広げる良い機会になりました。自分の中に積み上げる想像はどれも心を支えて癒してくれます。学べば学ぶほど向こうに居る見えない誰かに涙が出ますし、手を合わせたいと思います。

今回『維盛入水』で滝口入道の言葉を語りながら、励まされる安堵と、未練を断ち切る声の圧力と、好きな人を送る涙を一度に感じ続けました。色んな気持ちで心が渋滞です。数か月、物語の皆さんと一緒にいたような気がしているので離れるのはさみしいですが、また改めて物語を訪れるとき、もっといろんな景色が見えるように練習を重ねます。

お世話になったkt.Spaceさん、遠くから足を運んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。またお会いできますように。

『横笛』『維盛入水』
現代語訳あらすじ

平家物語巻第十『横笛』現代語訳あらすじ

平家物語巻第十『横笛』あらすじ
平維盛は都に残した家族への想いが募り、平家一門が居る屋島を密かに抜け出しました。ですが、都に上って捕らわれてはならないと葛藤し、高野山へと向かいます。そこにはかつて愛した女性、横笛に想いを寄せながらも、家族の反対に遭い仏道へと進んだ滝口入道(斎藤滝口時頼)がいました。

『横笛』現代語訳全あらすじ
https://morinorijapan.com/tale-of-the-heike/yokobue-nachinookinite

平家物語巻第十『維盛入水』あらすじ
熊野三山を参詣した平維盛達は、海へと進みます。入水を前に家族への思いに苛まれる維盛の様子を見た滝口入道は、涙をぬぐい平常心を装って維盛を説きます。未練を断ち切り、悟りの道を選ぶ維盛の最期が描かれます。

『維盛入水』現代語訳全あらすじ
https://morinorijapan.com/tale-of-the-heike/koremorijusui-nachinookinite

関連記事